3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

エバーグリーン牧場とゆかいな仲間たち

第34話 うんともすんとも言わないとはこのことか

それから僕らはまた馬のつながれた元の場所までゆっくりと歩いて戻り、一人ずつ馬の背中に乗る練習をした。その白い牝馬は「ダッチェス」という名前で、初心者にも我慢強く付き合ってくれる優等生だ。 順番に飛び乗る人のために、両手のひらで踏み台を作って…

33話 ぬるぬるの中で

泥の中に足を突っ込むのは何十年ぶりだろう 「分かったかい。泥があっても馬は平気で歩くように見えるが、実際は今のあんたたちと同じで、馬にもバランスはとりづらいんだ。だから上にいる人間は、それを分かったうえでうまく体重を移動させないといけない」…

32話 体重移動

草原の真ん中まで来ると、サムエルは僕ら五人に車座になって座るように言った。いつの間にか目の前にやってきた犬をつかまえてなでている。そして太陽の光が植物を光合成させ、それを動物が食べて命が循環していくだとか、水の大切さについての説明を一通り…

31話 馬の蹄が犬の餌

馬を並べてつないでおけるこの柵をベースにコミュニケーションのイロハを習った。 ところでその日初めて、僕は馬の「蹄」が人間でいう「爪」にあたるものなのだと知った。サムエルがおもむろに鎌のような道具で蹄を1センチほどそぎ落としたのだ。そのスライ…

30話 英語だろうが、日本語だろうが、スウェーデン語だろうが・・・

剣山のようなブラシや蹄から石をかき出すピックたち。 その日、僕以外に馬術セッションに参加したのは四人だ。初日から一緒のバーニャやデイビッドのサンフランシスコ組に加え、新しくスウェーデン人の若いカップルが日帰りで加わった。 「シンジ、今日のメ…

29話 カラフルで野菜中心

サラダが中心の朝ご飯は、見ているだけで体調がよくなる気がする。 翌朝の目覚めは快適だった。喉の痛みはサン・クリストバルの薬局併設診療所で、大柄な女医のお姉さんから処方された薬がきいたのか、ほぼ感じなくなっていた。ひどくなったときにと抗生剤を…

28話 月夜に笑う馬

納屋風小屋は寒いを通り越して冷たかった ところで恥ずかしい話だが、この宿で過ごす初めての夜、真夜中に小便に起きた。医者に風邪のひき始めだから水を大量に飲めと言われたので、ひたすら飲み続けたせいかも知れない。 外は月の光で明るいから、真夜中で…

27話「何もない」というぜいたく

空には月あかりがまぶしい クリスマスを間近に控えているはずなのに、村には華やかな祭りの雰囲気はない。だけど教会では連日ミサだけはしっかり行われている。この村で唯一辟易したのは、夜六時頃から牧師が村人たちに大音量のマイクで説教をがなりたててい…

26話 デスコネクタールセ(接続解除)

納屋風小屋の外ではよく犬たちが寝そべったり、僕を待ち構えたりしている 日が暮れる前にシャワーを浴びたいとステファニーに伝えると、さっきのボイラーに薪をくべ、お湯を沸かしてくれた。シャワールームは人ひとりがやっと入れるぐらいの小さなスペースだ…

25話 アインシュタイン登場

教え子にはあだ名がつく(男子のみ) 結局その日の午後、2時間ほど続いたセッションで、僕らは少し馬にまたがるところまで教えてもらったが、歩くまでで決して走ることはなかった。 その前に覚えなくてはならないことがたくさんあるのだ。牧場の中で自然と…

23話 日光がなければ生きていけない

広大な草原を横切り、自然を感じるセッションへ ひとまず馬たちを小屋に戻したら、今度はサムエルを先頭にして牧場のど真ん中を横切り、何度か柵のかんぬきを上げたり下ろしたり、柵の出入り口の丸太の間に体をくぐらせたりしながら、牧場の広い敷地を奥へ奥…

22話 馬に手のひらはないけれど

馬の毛並みや肉付きを見ているといかに愛されているかが分かる それまで観光地で馬に乗って散歩したことがあったので、僕は勝手に乗れる気になっていたし、ある程度馬のことは知っているつもりでいた。だけどサムエルからいろいろな説明を受け、馬と触れ合っ…

21話 パートナーはネイライダ(馬の名前)

馬との至近距離でのコミュニケーションは、結構緊張する 次に向かったのは道具小屋だ。壁には馬にかける手綱がかかっていて、棚には黒いヘルメットが7つほど並んでいる。乗馬用のヘルメットなので、つばがほんの少し出っ張っている。生徒の僕ら3人は、それぞ…

20話 馬術教室が始まった!

いよいよ馬術教室が始まる いろいろな話をしながら、出された料理をすっかり平らげ、オプションで追加したスペイン産の赤ワインを飲みほした頃、バーニャとデイビッドのサンフランシスココンビが母屋の外で退屈そうに座っているのに気づいた。だんなのサムエ…

19話 ホームスクールと日本人のレール

ステファニーは魔法のように素早く、限りなくヘルシーなご飯を作る 僕の他に宿泊客はバーニャとデイビッドしかいないが、彼らは部屋で自炊しているらしい。だからオーナー家族と食事を共にするのは僕1人だ。夫婦や娘と一緒に食卓を囲むから、まるでホームス…

18話 猫、犬、ニワトリと泣きそうな七面鳥

猫たちは僕が相手にしないのが分かるとさっさとどこかへいく せっかくなので小屋の裏でハンモックに横たわって本を読もうとしたが、あまりに空が広く、おまけに冬の高原は涼しいので何だか落ち着かない。視界に入るものと言えば、斧や山積みされた薪、タイヤ…

17話 たった1つのルール

エバーグリーン牧場の犬たちは何だかとても人懐っこい 続いて小屋の裏側にあるトイレとシャワーに案内された。シャワールームは1人がぎりぎり入れる広さだが、小さな脱衣所も用意されているから体を洗うには十分だ。 昼間に入ればボイラーのタンクが日光で…

16話 納屋風小屋を独り占め

納屋風小屋(Barn Wood House)は最大4に泊まれるけれど・・・ ところで16歳の長女ゾエは、今僕がさっさと離れてきた、この近辺で1番大きな観光地であるサン・クリストバルの町に、フランスから来たおばあちゃんと泊っていてその日は不在だった。 リヨンに住…

15話 前髪を初めて切ったら

エバーグリーン牧場には馬が14頭いるだけではなかった ステファニーは民宿でいうところの女将だ。 客が来たら泊まる場所に案内し、食事を作り、会計や予約の受け付けもする。そして当然家族の面倒も見るから、ゲストは毎回家族と一緒に食事をすることになる。…

14話 世界中から集まる宿泊客、僕もその1人

屋外の木のテーブルにはひっきりなしに誰かがたむろしにくる 母屋の前に広がる広大な土地に、丸太で作った六人がけのテーブルがある。 そこで粘土をこねくり回して陶器らしきものを作ろうとしている褐色の肌をした女性が笑いかけてきた。あいさつの握手は、…

13話 「さあ、ようこそ、私たちの牧場へ」

エバーグリーン牧場は森の中に突然現れた 砂利をぺちぺちこんこんとはじきとばしながら、がたがたと大きな音を立てて進むタクシーの中では大声を出さないと相手の声が聞こえない。だからだんだん僕もステファニーも無口になった。そうして国道沿いのベタニア…

12話 スペイン語を選ぶか、英語を選ぶか

山を切り開いた道の脇にはたまに畑がある 「実は家族が日本に帰っていて、久しぶりに1人旅をできることになったから、多少遠くてもなかなか行けない場所を探していて、エバーグリーン牧場を選んだんだ。もし気に入ったら今度は家族と来るかもしれない」 「…

11話 露店、サボテン、木箱たち

国道190号線沿いの露店にはサボテンの鉢と木箱が並んでいる 途中タクシーはステファニーの指示で、道端にある露店に寄った。サン・クリストバルからベタニアまでの道はきれいに整備された国道だけれど、ひとたび道路から路肩に出ると黄土色の砂地だ。その上…

10話 宿の女将は笑顔が素敵

国道190号線ぞいの路肩は車が横づけすると砂埃が舞い上がる 細身で姿勢が良くて、薄い青のスリムなジーンズ姿の彼女は、僕がまさに目指しているエバーグリーン牧場の奥さん、ステファニーだったのだ。娘と買い出しに来ているところ、あまりに偶然に初対面し…

9話 目指せエバーグリーン牧場。でもどうやって行く?

オレンジなどの果物に加え、巨大な冬瓜が並んでいた ベタニア村の国道沿いには、みかん、オレンジ、バナナ、りんごなど色鮮やかな果物の並んだ露店がずらっと並んでいた。階段状に木箱を重ねた陳列棚にオレンジ色や黄色が並び、1番下の地面には濃い緑をした…

8話 速度不明のタクシーはベタニア村に到着した

国道190号線を乗り合いタクシーはひた走る(速度不明) 初対面で厚かましいな、と思いながら僕は黙って暗算し始めた。日本の紙幣といえば、最低でも1000円だ。たとえ持っていたとしても、行きずりの人に簡単にあげられる額ではない。 「ペソでいうと200ペソ…

7話 円が欲しいのはなぜ?

ロヘリオさんの車は定員の4名がそろわないと発車しない。 でもなかなかタクシーは出発する気配を見せない。なんだかさっきのバンと同じパターンだなと思って周りの様子をうかがっていると、運転手以外に4人乗客が集まらない限りいつまででも待ち続けること…

6話 乗り合いタクシーは見つかるか?

サンクリストバルの街並み。本文とはあまり関係ありません。 サン・クリストバルから、エバーグリーン牧場のあるサン・イシドロ・チチウィスタン村に向かうには、終着地点の「テオピスカ」行きの乗り合いタクシーに乗るようにと、宿からの案内メールには書い…

5話 診察料はタダなのです

とうもろこし、食べきれないのでリュックに詰め込んだ。 そんな自然派トウモロコシをがりがりとかじりながら、また少し歩くと薬局を見つけた。ジェネリック薬品を置く、その名も「ファルマシア・アオーロ(節約しまっせ薬局)」というチェーン店だ。メキシコ…

4話 はりぼておさげと橙色のトウモロコシ

楽団とはりぼてたちは堂々と国道を横切る バンを降りたら 「サン・クリストバルの中央市場まで歩いてバスに乗り、ナタレ村に行く」。 宿からの案内通りに市場を目指して歩こうかと思ったが、10ブロックも歩かなくてはいけないことが、その場にいた停留所のお…