3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

第38話 100回乗れば一人前?

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山のツアーが終わった。ひと風呂浴びるか。

スリルと胸のすくような爽快さを味わった、この森の中の乗馬ツアーは結局一時間半ほど続いた。そして日が傾き始め、山から牧場に戻る砂利道で、馬から降り、歩きながら手綱を引くサムエルがぼそりと言った。

 

「乗馬は数をこなさないと一人前にはなれないよ。そうだな、まずは百回だ。その間にたぶん三回か四回は落馬するはずだ。そうやってうまくなっていくんだよ」

 

確かに百回馬に乗るのは楽しいだろうけれど、馬から落ちるのはごめんだと、その日の森の中の様子を思い出しながら僕はつくづく思った。本当に落ちたら松の枝が背中に刺さり、きっと痛くて動けなくなるに決まっている。

 

もしかしたら、後ろから来た馬に踏んづけられるかもしれない。でも、そんなリスクも含めて、パートナーのネイライダの背中に乗せられ、森の中で過ごしたひとときは、相手がどう思っているかはさておき、ずいぶん素敵な体験だった。チアパスの美しい原生林の中を、馬に乗って駆け巡るなんてなかなかできるものではない。

 

一日のセッションのすべてが終わり、スウェーデンから来た二人は、宿があるサン・クリストバルまで戻っていった。口伝えで広がるエバーグリーンの噂は、また彼らが行く旅先で、じわじわと広がっていくに違いない。

 

バーニャとデイビッドが自分たちの部屋に戻り、僕も一度小屋に戻ってシャワーを浴びた。薪はサムエルが割って焚いてくれた。夕方の澄んだ冷気の中で、熱い湯気が小さな空間いっぱいに立ち込めた。もちろん、沼地で足にこびりついた泥もすっかり落とした。