そんなデイビッドの引っ越し荷物の中に、小さなギターケースがあった。
実は彼らの部屋を初日に見せてもらったときに見つけて気になってはいたのだが、特に触れずにいた。でも僕は楽器が大好きでギターも少し弾くので、我慢できずにデイビッドに弾かせてもらった。カリフォルニア製の小さなギターは、旅行にはぴったりの大きさだ。お互いのギター歴とほんの少しのレパートリーを披露しあった。
「僕はギター習いだして三年なんだ。もともとそんなに音楽が得意ではないけど、ギターで曲を弾けたらかっこいいなと思ってトライしている」
デイビッドはギターの弦を指でつまびくアルペジオ奏法を少し見せてくれた。
「ハレルヤという曲なんだけど、知らないかな」
僕はその曲を聞いたことがなかった。僕は昔に覚えたブルースやラグタイムのフレーズをいくつか弾いた。そして一つ提案した。
「今晩クリスマスディナーで、二人で曲を披露しよう。せっかくギターもあるし、盛り上がるよ」
「クールだね、それ。分かった」
デイビッドはあまり人前では弾き語ったことがないと言っていたが、彼も参加することに意義を見出しているようで快諾した。僕は僕で何曲かレパートリーはある。何とかなるし、弾かないで後でやればよかったと後悔するのは、この牧場では選択肢として思いつかない。