そのあとは僕もデイビッドもそれぞれの「芸」が終わり、肩の荷が下りたせいで、ぐいぐいワインをあおった。
いつの間にかラテンのダンスミュージックがかかり、踊りが始まった。娘二人、ゾエもシャヤンもアメリカ人とフランス人のハーフだけど、育ちはメキシコだから、結構しなやかかつリズミカルにステップを踏めるのだ。僕は隣に座っていたサムエルを、食卓の横にできた小さなダンスホールに連れ出し、彼は長女のゾエと、僕は次女のシャヤンとペアになって踊った。
初めてエバーグリーン牧場を訪れた僕が、こんなふうにみんなと打ち解けられてよほどうれしかったのか、僕はサムエルと一緒に机をたたきながらリズムをとり、肩を組んだりしながら踊っていたみたいだ。
覚えていないのだけれど、その様子は僕のカメラに録画されていたので後から知った。いつの間にかクリスティーナが撮影していたのだ。こんな風にして僕のエバーグリーン牧場でのクリスマスイブは、不思議な人のめぐり合わせと、多国籍な料理や音楽に包まれながらにぎやかに過ぎていった。
一人二人とその場を去っていき、僕も小屋に戻るために席を立ち母屋を出た。芝生の広い草原を横切ろうとすると、サムエルとデイビッドが焚火を前に静かに語らっていた。母屋から黄色くやわらかい明りが漏れる以外は、街灯も何もない。星と月の光のせいで暗いという感覚は全くない。
そんな静けさの中、炎がぱちぱちと音を立てて燃えあがり、二人のほりの深い横顔にくっきりと黒い陰ができている。「お休み」とあいさつを交わし、草の上を僕は再び歩き出した。そして芝生を踏む自分の足音以外は何も聞こえなくなった。