これがサン・イシドロ・チチウィスタンという村の、とある牧場で過ごした三泊四日の一部始終だ。
チアパス州奥地の森の中に、どうして遠いヨーロッパから人がやってくるのかと、最初は不思議に思ったが、今ではその理由がよく分かる。
「イタリアからメールが来てね、新年をここで過ごしたいって」
ステファニーは僕がメキシコシティに帰る最終日の朝も、メールで入ったこの牧場のリピーターからの宿泊依頼に、あわただしく返答していた。
一度この場所を訪れた人にとってこの牧場は、まるで仲のいい親戚の家みたいにいつでも戻れる場所の一つになるのかもしれない。このイタリアの夫婦がたぶんそうだったように、やっぱり僕も「今度はいつ戻ってこられるのかな」、とかなり具体的なプランを思い浮かべながら帰路についた。
タクシーでサン・クリストバルに向かった僕は、そこから空港のあるトゥクストラ・グティエレスまでの大型長距離バスに乗り込んだ。
往きより少し余分にお金は使ったけれど、何とか当初の誓い通り安い交通手段を乗り継いだ僕は、旅行前に届いた牧場からの「挑戦状」に、勝手に勝利宣言をした。そして年末間近のメキシコシティの自宅に戻ってからも、エバーグリーン牧場で過ごした時間を、「ハレルヤ」のメロディを口ずさみながら思い出していた。
(おわり)
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「エバーグリーン牧場とゆかいな仲間たち」の連載は以上で終了です。
長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
僕は彼らの回し物でも何でもありませんがエバーグリーン牧場のWebサイトのリンクはこちらです。
吉川真司