3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

第7話 Caballo Viejo(カバジョ・ビエホ) 年老いた馬

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 メキシコにいてうれしいことの一つは、道を歩いているだけで家庭や店からラテン音楽が漏れ聞こえることだ。せっかく中南米にいるのだからと、僕はせっせとサルサやクンビア、マリアッチなどの音楽を友達からダビングさせてもらったり、CDショップで購入しては、聞いた。

 その一つをダニエルに聞かせて、ぜひ弾いてみたいとお願いした。すると次のレッスンには、コード進行を解読してくれていた。

 

「あんたもコードを自然に見つけられるようにいずれはなるぜ」

 

と何度も言われたが、僕にはまったく音楽を聴いていてコードが何かを見つけられる気がしなかった。

 

「この曲はコードを3つしか使わない。Cm→G7→Fm、これだけだ。後はシンジ式にラテンのリズムで伴奏すれば歌えるようになる」

 

今のように歌詞を検索すればインターネット上で歌詞がすぐ出てきて、おまけにコードも弾き語り用に表示されるなんて世界は夢にも思わなかった当時のことだ。僕がひたすらやったことは友達にダビングさせてもらった曲をイヤホンで聞いては、歌詞をキンバリー社製のノートに書きだした。コードが変わるタイミングで、歌詞の上にCmなどのコード名をひたすら書いてはギターで弾いてみた。この大切なノートは紙が薄くて裏映りする。

 

ダニエルとのセッションは週2回だったから、僕はその間に課題曲や、出された練習――フレットを1つずつずらして弾いていったり―――を何度も繰り返した。

 

Caballo Viejoはもともとのベネズエラの曲のようで、昔から中南米の各国で歌われている。自分の母国語が自国内でしか話されない日本人にとっては不思議なことかもしれないが、スペイン語は17か国で話される。だから多少のなまりはあっても、国境を越えたのに同じ言葉がだいたい通じてしまう。この曲は確かにベネズエラで生まれたかもしれないが、メキシコでもアルゼンチンでも聞いたことがあるし、たぶんそれぞれの国でどこの国の曲かなんて関係なく親しまれている。

 

そしてこの曲はフランスのフラメンコポップスグループのジプシーキングスが「バンボレオ」という曲の導入部分でオマージュとして採用している。

 

僕はスペイン語の授業が終わるとクラスメートのアメリカ人学生たちとオアハカのソカロ(中央広場)でエスプレッソを飲んでおしゃべりし、家に帰るとギターをずっと抱えては、鳴らしていた。

 

そしてカバジョ・ビエホは僕としては最初のスピーディなラテンリズムにのったダンサブルな曲として、ギターを鳴らしながら歌えるようになった。

 

「あんたは日本人だけど、血の中になんかラテンが混ざっているみたいだな」

 

ダニエルは、僕がこの曲を披露すると嬉しそうに言った。

 

 

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