「西洋の音楽にはいろんな法則がある。その一つに1・4・5というのがある」
そう言いながら、ダニエルは聞き覚えのあるラテン音楽を弾き始めた。
「Cが1とすれば、4はF、5はGだ」
つまり一つ目のコードがCだから、そこから4番目なので2番目がD、3番目がE、そして4番目がFとなる。それをじゃかじゃか順番に鳴らすだけで、見事にLa Bambaの伴奏になる。
「Dから始めるならD、G、Aを繰り返せばいい」
たった3つのコードで曲ができるというわけだ。例えばキューバの超有名な曲「Guantanamela(ワンタナメラ)」も同じ1、4、5の順番でコードをひたすら鳴らすだけだ。コードの文字を見ると勝手に指がフレットをおさえられるようになっていた僕は、面白がっていろんなコードを基点に、イチ、ニ、サン、シ、ゴとアルファベットを順に追って行ってはラ・バンバを弾いた。
Para bailar la bamba (ラバンバ踊るには)
Para bailar la bamba (ラバンバ踊るには)
Se necesita una poca de gracia (ちょっと愛嬌がいるだけさ)
Una poca de gracia y otra cosita(ほんの少しの愛嬌と他にもう一つ)
Ay arriba y arriba (よし上を、上を)
Y arriba y arriba, por ti seré (上を君のために目指すんだ)
Por ti seré (君のために)
Por ti seré (君のために)
Yo no soy marinero (水夫じゃないぜ)
Yo no soy marinero, soy capitan (俺は水夫じゃなくて船長だ)
Soy capitan (船長だ)
Soy capitan (船長だ)
まあ、歌詞にあまり意味はない。なんだか若い男が必死で背伸びしようとしている様子が分かる。メキシコの港町ベラクルス地方の作者不明の曲だが、まるで現地では国歌みたいであまりに有名だ。
たった3つコードを覚えさえすれば、弾き語りは誰でもできる。そして名曲と言われるものほど、コード進行は簡単だったりする。