3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

第17話 鼻歌に作詞という宿題

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毎週日付と課題がリストアップされた


ある日、ダニエルのアパートにレッスンに行くと、例によって小さなギターを抱えながらダニエルが鼻歌を歌いながら伴奏していた。ゆったりとしたバラード調のメロディーだが、なぜか懐かしい感覚がした。

 

その日、普通にレッスンの中で新しいコード進行やデモンストレーションの演奏を見た後に、また例の懐かしいメロディの鼻歌を歌い始めた。

 

「シンジ、この曲は日本語の歌詞にしようと考えている。てつだってくれないか」

 

「???」

 

「だからあんたが作詞して初めて、曲として完成するんだ」

 

僕は作詞なんかしたことなかったけれど、良しあしが相手に伝わるわけでもないし、軽い気持ちで引き受けた。でもそれは結構緻密な作業だった。

 

「よし、これから曲に歌詞を載せる方法を教える」

 

何百曲と書いてきた彼は、独自の方法で曲を世に送り出してきたのだ。僕は一言も漏らすまいと耳をすました。

 

「まず、俺の場合は鼻歌でメロディを作る。すると自然にそれを伴奏するためのコード進行が決まる。ここまではいいな」

 

そういえば彼はいつもギターを抱えて鳴らしながら、アーとかウーとか、ダダダとか言いながら何となくメロディを口ずさんでいた。そしてそのあと、メロディを音の数に分解し、3つとか4つの音ごとにに分るため、ノートに「3/4/3」と書き始めた。その上にはコード進行がメモ書きされる。

 

要するにこうすることで、一度口ずさんだメロディを記録していくのだ。そしてある程度形になるとラジカセで曲を録音する。僕は今回その録音したタイトルも歌詞もない「何となく懐かしいギター伴奏つき鼻歌」を宿題で持たされた。

 

そうして僕はダニエルと初めてのコラボレーションに向けて苦悩の日々を送るのだ。