ダニエルは、レッスンの合間や始める前にいつの間にかギターのデモンストレーションをしていることが多い。呼吸するみたいに音楽が「出てくる」んだと思う。
その中で何度も彼のオリジナル曲ーー毎日作曲しているから自分の曲が無限にある―ーを披露してくれるシーンがあった。中でも3拍子の曲で「I give in」という、彼にしてはさわやかなメジャー調でしかも弾きやすいシンプルなコード進行だった。
I still can be found on this merry-go round
I can't seem to get off, I can't seem to slow down
I go round and around with my head in a spin
I can never give up, but sometimes I give in
I give in, Igive in
I give in to my heart
I give in to my whim
I try hard to do what you all want me to
But it seems that my mind has its own point of view
And I can't help but thinking these wild restless thoughts
But to live out your dreams you must pay the cost
So I hard to quiet thesse voices within
But sometimes I am weak
And sometimes I give in
訳詞を付けるのが難しい内容だし、本人は望まないかもしれないけど概要はこうだ。
メリーゴーラウンドはぐるぐる回っていて、止まれないし下りられないみたいに見える。
人がやってほしいことと、自分の考えは違うけど、何とか落としどころを見つけようと頑張ってるし、それには代償もともなう。
でも時にはどうしても自分がやりたいことを貫きたくなることがある。
その気持ち抑えようと思うけど、やっぱり自分の思いにゆだねるときがある。
こんな内容だ。I give inというのは、たぶん譲るっていう意味だと思うんだけど、僕は英語ネイティブではないので本当に意味するところは想像するしかない。
ダニエルはたぶん、生活するためにがまんしないといけないことが人生には多いけど、人の意見に逆らってでも自分の声に従うことを何度も経験して、いろんな壁にぶち当たっては、歩き続けているのだと思う。ミュージシャンで生きることって、本当はそんなに簡単ではないんだろう。
僕は、学生の頃、何度この歌詞を見ても意味が分からなかった。けど今こうして当時の彼と同い年になりつつある中、何となく「I give in」で言いたいことがおぼろげながらわかりつつある気がする。
仕事や自分のやりたいこと、家族や時間の制約なんかの中で、どう折り合いをつけるか。悩みながら、でもたまには自分の思う通りに行動しようって思うことがある。だけどその割合は年を重ねるごとに減ってきている気がする。それは言われた通りにする方が楽だからかもしれない。そして自分を抑え込んでいるのかもしれない。
イントロで彼がピックを使って弾くアルペジオは、かっこいいが、結局僕にはまねできなかった。でもずっと心の中で今も響いている。