母屋のキッチン兼食卓の周りには、久しぶりに会った友達同士の近況や初対面のあいさつで、華やいだ空気が充満している。
松ぼっくりに娘たちが色を塗って作った飾りを、そこらへんでサムエルが切ってきた、樅木っぽい木の周りに置いて立派なツリーができ上がった。その根元に僕はさっき山道で拾ってきた大きな松ぼっくりを五つ黙ってそっと並べた。
サムエルがブルーのイルミネーションライトを手早く木の周りに巻く。準備を進めながらそれぞれが自分の好きなワインを持ち寄り、グラスを片手に語り合う。僕は前日までサン・クリストバルにいたクリスティーナおばさんに、チリ産のシラーを持ってきてもらっていた。ステファニーが連絡してくれたのだ。でも誰がどのワインを飲んでも、もはや構わなかった。会話はあちらこちらに話題が飛んでいく。
「この子たち、『親は何している人?』って聞かれたら、『ヒッピーです』って答えるの」
ステファニーはゾエやシャヤンがいる前でそう言って大笑いした。確かに彼らがヒッピーみたいだったのはだいたい想像がつく。子供たちはそんな親を面白おかしく形容するが、その裏にはいつも尊敬の念が見え隠れする。こんな素敵な家族が生まれるなら、ヒッピーが多少増えるのもいい。
次女のシャヤンは、セバスチアン夫婦が連れてきた子供たちの面倒を見ている。赤ちゃんの時から知っているから、子供たちはシャヤンのことを親戚のお姉さんみたいに慕っているのがよく分かる。
僕はその時シャヤンがスペイン語で三歳と五歳の子供たちに大きな声で「ほら、外行くわよ」と言っているのを聞いた。
僕とはなぜか英語で話していたので、なんだ、普通にメキシコの子供みたいに話せるんじゃないかと安心した。そして母屋の外の芝生でキャーキャー言いながら駆けまわっているのを見て、今まで大人っぽく見えていたシャヤンがまだ結構幼いところもあるんだなと発見した。