午前の部が終わると、昼食の時間だ。生徒全員で母屋に行き、ステファニーの手料理をごちそうになった。サムエルとシャヤンも一緒でにぎやかだ。骨付きの豚のあばら肉が出てきたから、体を動かしてお腹が減っていた僕にはたまらない。マッシュポテトのサラダもボールに入ってテーブルの真ん中に置かれている。そして彼女の料理には必ず細かく刻んだ紫の玉ねぎと、真っ赤なトマトを小さくキューブ状に切ったものが出てくるので、とにかく色が鮮やかだ。
外に出てウッドデッキでコーヒーを飲んでみんなで休憩した。
サムエルはテーブルに腰掛ける僕らの脇で、立ったまま煙草を吸い、メキシコで体験したバンジージャンプについて派手なジェスチャーを交えておしゃべりをしだした。
「バンジージャンプやったことある人いるかい」
その場に経験者は誰もいなかった。僕らは意外におとなしいのだ。
「初めてカンクンの海でバンジージャンプをやったときは、本当にビビったよ」
普段は怖いものなんか何にもないという顔をしているのに、ジャンプ寸前のハラハラ感が伝わってくる。
「台の上に立った俺は、本当にここから飛ぶのか、おいちょっと待て、何をするんだ、とかわめいている間に、インストラクターに無理に促されて、気づいたら水面めがけてダイブしていたんだ。目の前に水が迫ったかと思ったら上に引っ張られてさ」
水面ギリギリまで顔が近づいた瞬間を語るとき、サムエルは目を大きく見開いた。彼の話はいつも臨場感にあふれていてはらはらさせられるが笑いも絶えない。風貌からして、いろいろなところを身一つで冒険してきたのが分かるから、若僧の僕らはにやにやしながら話に引き込まれてしまう。
「それからは病みつきさ。もういろんなところで十三、四回は飛んだかな」
にやりとしながら、短くなった煙草をもう一度ふかした。
昼の休憩が終わると、サムエルから生徒の僕ら五人に提案があった。
「ここからはオプションだけど、行きたい人は馬で森をめぐるツアーに連れて行く。一人あたり五百ペソ(三千円)だけど、どうする?」
どうするもこうするも、みんな大賛成だ。僕なんかむしろこのツアーを一番楽しみにしてやってきたようなものなのだ。そうしてもうすっかりサムエルの弟子になったバーニャ、デイビッド、僕と、アクセル、アナの順番で、サムエルを先頭にしてみんなで山へ向かって歩き始めた。