僕が歌い終わってしばらくおかずをつまんでいると、デイビッドが彼の持ち歌「ハレルヤ」をギターで爪弾き始めた。僕は昼間に彼と二人でいるときに、お互いどんな曲を弾くのかを見せ合っていた。そのときに一番だけ聞かせてもらっていたが、フルコーラスを聞くのはそれが初めてだった。
I‛ve heard there was a secret chord
(この世には秘密のコードがあるらしい)
That David played and it pleased the Lord
(それをダビデが奏でて、神様が喜んだんだ)
But you don‛t really care for music, do you?
(でも、みんなは音楽なんて関係ないんだろ)
Well it goes like this:
(そのコード進行はこんな風だ)
The fourth, the fifth, the minor fall and the major lift
(四度から五度、マイナーからメジャーへ)
The baffled king composing Hallelujah
(困惑した王は、ハレルヤを作曲したんだ)
Hallelujah. Hallelujah, Hallelujah. Hallelujah
(ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ)
静かにしみるアルペジオの響きは、何やら意味深そうな歌詞に妙にしっくりくる。「ハレルヤ」はレナード・コーエン作曲で、八十年代に歌われた曲だ。でもその後たくさんの人がカバーして、そのたびにヒットするのでいろんな世代に愛されている。最後に四回「ハレルヤ」というキャッチーなフレーズが繰り返されるから、そこは必ず大合唱になる。英語を話さないクリスティーナも、そもそも歌自体を知らない僕も、このサビのパートだけは一緒に歌うことができる。
四番まで続くが二番、三番は長女のゾエがソロで、僕が渡したスプーンをマイク代わりに歌った。堂々として、美しい歌いっぷりだった。そして最後の四番は、ついに真打ちデイビッドが弾き語った。終わると大歓声が起こり、そしてざわざわとにぎやかな会話が再開し、ショーの後の余韻をみな楽しんでいた。