3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

20話 馬術教室が始まった!

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いよいよ馬術教室が始まる

いろいろな話をしながら、出された料理をすっかり平らげ、オプションで追加したスペイン産の赤ワインを飲みほした頃、バーニャとデイビッドのサンフランシスココンビが母屋の外で退屈そうに座っているのに気づいた。だんなのサムエルが言った。

「彼らあんたのこと待っているんだぜ。終わったらすぐに乗馬を教え始めるから用意してくれ」

この牧場のウリは何かというと乗馬だ。もちろん観光地のサン・クリストバルにあるホテルなら近場で気軽に乗馬をアレンジしてくれるはずだ。だけどわざわざ多くの欧米人がここを訪れるのは馬とのコミュニケーションの仕方から、本格的に教われる珍しい場所だからだ。エクイテーション(馬術)というらしい。

この宿に泊まるゲストは、先生がサム1人だから、基本的にみな同じアクティビティに参加するみたいだ。

僕は部屋に一度戻って、ウォーターサーバーからペットボトルに水を満タンに注ぎ、顔や腕に日焼け止めを塗ると、デイビッドとバーニャに合流すべくすぐ外に出た。「喉がはれている間は薬を飲みながらとにかく水をたくさん、できれば2リットルでも3リットルでも飲みな」と医者に言われていたから、リュックにはボトルを突っ込んだ。高原の日中は日差しがきついから、日焼け止めオイルをたっぷり塗ってブロックしなくてはならない。デイビッドとバーニャは準備万端で、芝生の上でサムを囲むように立っていた。

馬にはいろいろな居場所が用意されている。でもたいていは囲いの中に入れられていることが多い。

1頭1頭がいる柵には、手書きで名前がペイントされた名札がかかっている。でも字が読めない馬たちは、決められた場所にはこだわらず、他の馬の柵にお構いなしに入っている。だから、僕は14頭の馬全部にシラーズとか、ゼウスなどとしっかり名前がついているのに、どれが誰だか結局ほとんど覚えられなかった。

その柵に続いて餌を食べるための小屋がある。中には地面まで頭を下げないでも餌が食べられるように、ちょうど胸の高さあたりに餌箱が用意されている。

馬術教室の始まりは意外に地味で、餌やり用馬小屋の隣の小さな倉庫からスタートする。そこにはトウモロコシの実がたっぷりと入ったずた袋がある。その乾いた粒はサン・クリストバルで食べたトウモロコシと同じオレンジ色をしていた。

サムエルはそれを石灰入りの水に入った小さな白い手桶に浸す工程を説明した。あらかじめ水につけておいたトウモロコシは、袋の中の乾燥した粒と比べてやわらかい。そしておもむろに水分を含んだ粒を地面に撒き始めた。僕ら3人も真似をして、渡されたミニ手桶からトウモロコシをつかんで地面に撒いた。

すかさず待ち構えていたニワトリの一行が、ギャーギャー言いながら土ごとコツコツつつき始めた。サムエルはどうも田舎ライフど素人の僕らに、大地からとれた穀物をニワトリに還元する食物の循環について説明したかったみたいだ。